虫歯で神経をぬくかの判断は
自分の歯を生涯使うためには、神経を可能な限り残すことが重要です。
痛みやしみる症状が出る前に定期検診を受け、虫歯が見つかったら早期に処置しましょう。
しかし、大きく進行してしまった虫歯を除去した際に、神経が露出してしまった場合、神経を残すべきか、取るべきかの判断についてお話しします。
神経温存のための具体的な手順
当クリニックでは、レントゲンなどで虫歯が大きく神経まで達している可能性がある場合でも、可能な限り残す事を前提に治療に入ります。
右下一番奥の歯に大きな虫歯があり、神経がある歯髄腔まで到達している。(赤マーク)
一般的には神経をとる処置を選択することが大半を占めると思うが、この治療では神経を温存でき、3年経過後も神経は正常で、何の違和感もなく使えている。
感染リスクを減らすために
神経が露出することを「露髄(ろずい)」と言います。
露髄した神経に唾液などが触れ、感染してしまうと神経を残せる可能性が極端に下がってしまいます。
そのため、治療前の確実なラバーダム防湿は必須になります。
もし虫歯が大きく、確実なラバーダム防湿が難しい場合は、虫歯で無くなってしまった歯を樹脂などを使い、修復してから処置を行います。
左写真:虫歯が大きく歯茎の下まで進行している。このままではラバーダム防湿をして確実な根管治療をする事が不可能。
右写真:歯に被っている歯茎を取り除き、歯の虫歯を完全に除去した。これで土台を作る事が可能になる。
確実な防湿が出来たら、神経側の虫歯を確実に取り除きます。
左写真:虫歯が取り除かれ、樹脂で歯を再生した。
右写真:深い虫歯からの唾液侵入がなく、確実なラバーダム防湿ができている
虫歯除去の工夫
通常、回転する器具を使い虫歯を除去しますが、不用意に神経に触ると巻き込み、神経が取れてしまうので細心の注意をはらい処置をします。
虫歯が確実に取れたら、残せる神経かどうかの審査をします。
まず、神経にエアーをかけても、周囲の象牙質から分離しないかを確認します。
感染によりダメージを受けている場合、風の圧力により、象牙質から神経が離れて動いてしまいます。
この場合は、さらに深い部位まで神経を除去します。この処置も先程と同様に神経を巻き込まないように注意が必要です。
深い位置で除去した神経に再度、エアーをかけ象牙質から分離しないのを確認できたら、次は止血をするかどうかのチェックにはいります。
止血とMTAセメントの使用
Queensland大学のDr.ジョージボーゲン(George Bogen)は5分以内に止血をすれば予後が非常に良好との見解を示していますので、当クリニックでもその基準を採用しています。
止血が確認できれば、MTAセメントで歯髄を覆います。この時に強く圧迫しすぎると貧血になり予後が悪くなります。
また、神経との間に空洞ができるのも良く無いので、適度な力で均等にMTAセメントを圧接するとても繊細な処置が求められます。
当クリニックではこの処置法で、勿論神経を取らなくてはならない場合もありますが、90%以上の確率で神経を温存しています 。
神経をぬく場合はどんな時か
虫歯を除去して、神経が入っている空洞(歯髄腔)に到達した時、神経と血管が既に無く、空っぽの場合もあります。
この状態はそもそも感染により神経が無くなってしまっているので残す事は不可能です。感染根管治療が必要になります。
また、露髄した神経周囲から膿が出ている場合も、感染が歯髄全体に及んでしまっており、健康な神経がないので速やかに感染神経を除去する根管治療を開始します。
神経を残せるかどうかのセルフチェック
最後に下記のセルフチェックで神経を残せる可能性が予測できます。
◎全く痛みや違和感がない
○冷たいものだけにしみる、刺激後すぐに痛みを感じ数秒で治る
△刺激後、すこしタイムラグがあり痛みを感じ、その後数十秒間痛みが持続する
△―×冷たいもの熱いものどちらもしみる
×熱いもので痛みが出て、その後、冷たいものを含むと痛みが緩和する
ただ、あくまで目安の為、露出した神経を顕微鏡を使い拡大視野で直接神経断端を観察し、
さらに止血時間やエアー圧で接着性など総合的に判断します。
判断後、かなり低い確率でしか残せる可能性がない場合でも、患者様がご納得の上、温存療法を希望されればMTAを使い処置をさせて頂きます。
少しでも多くの方がご自身の歯を残すことができるように全力でサポートいたします。
ご自身の歯を守るために
神経を抜く必要のある状況を避け、ご自身の歯を長年残す為に、顕微鏡での定期検診を受け、自覚症状が現れる前に治療を受けることをお勧めします。
当クリニックは、現在の症状の改善だけでなく、将来の結果も考慮した治療を提供しています。
少しでも歯に違和感がある方はお気軽にご相談下さい。
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