神経をとった歯を長持ちさせるためには
YouTubeでの解説動画もありますので合わせてご覧ください
皆さんは歯の構造をご存知ですか?
歯の内部には神経と血管が通っている空間、歯髄腔(しずいくう)があります。
この歯髄腔の周囲は象牙質と呼ばれる組織で作られています。
象牙質の構成成分の70%は無機質でカルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウム、カリウムが結晶化して歯の硬さを出しています。
残りの30%は有機質で主な成分はコラーゲンになります。
硬い無機質にコラーゲンが入ることで弾力性や柔軟性が生まれます。
神経を取るとどうなる?
~神経を取ると歯のコラーゲンが減少し、弾力性が失われます~
神経をとると言うことは、血管も同時にとるということを意味します。
象牙質のコラーゲンはこの血管から栄養や酸素を受けとり、弾力性と柔軟性を維持していますが、血管がなくなってしまうと、歯のコラーゲンが20%も減少し、全体量の10%になってしまうとの報告もあります。
歯を失ういくつかの原因
~歯を失う主要な原因やその対策について~
歯を失う原因は歯周病が一番多く約37%、次いで虫歯が約30%となっており、破折は約18%との報告があります。
破折には事故などによる外傷も含まれますが、多くは歯根破折になります。
歯周病や虫歯は食習慣に気をつけたり、確実なブラッシングやメンテナンスでかなり防ぐことが可能ですが、破折はご自身の努力ではどうにもなりません。
上記のように神経をとってしまった歯の場合、歯根破折により抜歯に至るケースを多く拝見します。この破折をできるだけ起きないようにするために、当クリニックでは以下の処置を徹底しています。
当院が行う処置内容
~当クリニックが行う根管治療の方法と工夫について~
根管治療での工夫
根の部分で神経が入っていた空洞を根管と言います。根管治療が必要な歯は、根管の内側も感染しているので、その汚れた部分を取り除く必要があります。
根管壁を削る道具はリーマーやファイルと呼ばれる金属製の細いドリルです。
先端が細く、手元にくるほど段々と太くなるテーパーがついています。
この器具を根管内に入れ回転させることで根管壁を削りますが、この時に強い力が働くと歯に細かいヒビが入る事がわかっています。
当クリニックではこの器具は極力使用せず、使用する場合も回転運動ではなく上下運動させる事と超音波振動の器具を使って切削しています。
これにより、歯にかかかる負担を減らしています。
また、根管の太さより小さな径の器具を使うことでも破折リスクを回避できます。
根管内を清潔に保つために
根管内がきれいになったら、再び細菌が繁殖しないように、その部分を埋める必要があります。
通常は天然ゴムと酸化亜鉛が主成分のガッタパーチャと呼ばれる細い棒状の材料にシーラーと呼ばれるセメントをつけ、根管内に詰めていきます。
ガッタパーチャを隙間なく詰めるために、金属製のスプレッダーという器具で押し込みますが、力を入れすぎると根管が割れる可能性があります。
そのため、当クリニックではMTAセメントを使用しています。
MTAセメントはとても優れた材料ですが保健適用外です。しかし、当クリニックは自費専門クリニックとして、患者様の歯を長持ちさせるためにより良い材料や治療法を用いることを重視しています。そのためしっかりとご説明の上、同意して頂だければ使用しています。
MTAセメントは、根管が横に広がる力をかけずに、上から下に押し込む方法で詰めますので、破折リスクが上がってしまう事を軽減することが可能です。
※上顎前歯のMTAセメントを詰めている。根の先に見える白い物がMTAセメント。
それを上からプラガーと呼ばれる器具で圧接します。歯髄腔より器具の方が細く横への圧力が加わらない
MTAセメントは根の先端より5mm程度詰めます。
その上の部分には、歯を支えるための土台となるコアを入れる治療が必要です。
通常、コアは型を取って作るメタルコアやスクリューポストと呼ばれる金属のネジを使用しますが、金属は硬くて丈夫である一方、歯ぎしりや強いかみしめなどで大きな力が加わると、コアの先端部分から歯が折れてしまうことがあります。
破折を防ぐセラミック製のファイバーポストの使用
当クリニックでは、金属よりも歯の象牙質に近い弾性を持つセラミックで作られたファイバーポストを使用しています。
ファイバーポストは直径14ミクロンの細いファイバーを樹脂で固めた棒で、歯に力が加わった時でも強度があり、象牙質に似たしなやかさがあります。
このため、ファイバーポストを使用することで、根の破折の発生が大幅に減りました。
※当クリニックが使用しているのはジーシー社製のファイバーポストで、5種類の太さがあり、1本ずつ個別包装されているため、グローブで直接触れることなく、汚染されずに確実に接着操作ができます。
ただし、ファイバーポストを使うだけでは十分ではありません。
根管内にレジン樹脂を充填し、その中にファイバーポストを入れます。
この時、レジン樹脂と象牙質の接着、そしてファイバーポストとレジン樹脂の接着がしっかりとできていなければ、一体化した強固な構造にならず、歯が割れやすくなってしまいます。
ラバーダム防湿の使用
しっかりと接着するためには、象牙質の表面がしっかり乾燥していることを顕微鏡で確認してから接着処理を行うことが重要です。
また、接着面に血液や唾液がつくと、その部分は全く接着しないため、ラバーダム(ゴム製のシート)の使用が必須です。
湿度の管理も接着の強さに大きく影響します。
ラバーダムを使用しない場合、口の中の湿度はほぼ100%と言われており、湿度のコントロールができないラバーダム無しの治療は考えられません。
クラウンの重要性
~神経のない歯を保護するためのクラウンの重要性について~
上記のように、神経が無い歯は割れてしまう確率が高くなります、健康な歯の部分が残っている場合、インレーやコンポジットレジン充填などの詰め物での対応が可能ですが、それでも歯や根が割れてしまう可能性があります。
割れ方によっては抜歯になる事もありますので、歯をすっぽりと覆うクラウンが最善の治療法だと考えています。
しかし、クラウンを被せれば何でも良いわけではありません。
クラウンを着けるためのセメントの接着強度が上がっている昨今、適合の悪いクラウンでも長期間外れないことがあります。
これ自体は良いことですが、隙間から虫歯が進行していてもクラウンが外れないため、取れたときには大きな虫歯になっている患者さんを多く見かけます。
このような事を避けるには、適合が良いクラウンを着けることが肝要です。
適合がいいクラウンを作るために
このような事態を避けるためには、適合の良いクラウンを作ることが重要です。
適合の良いクラウンを作るには、まず削ったラインが滑らかで直線的である必要があります。
顕微鏡で拡大しながら形成を行うことで、歯茎を傷つけるリスクを減らします。傷ついた歯茎から出血すると、顕微鏡を使ってもクリアに見ることができず、正確な形成が難しくなります。また、傷が少なければ治療後の痛みや腫れも少なくなり、患者さんにとっても大きなメリットです。
正確な形成が終わったら、型取りをします。この型取りは意外と難しい処置です。削ったラインは歯茎の境目にあるため、そのまま型を取ると歯茎が被ってしまいます。型を取った後、石膏を流して模型を作りますが、歯茎が被っているとどこまでが削った部分かが分かりません。これでは正確なクラウンは作れません。
そこで、歯と歯茎の間にジンパックという糸を入れます。数分放置してから糸を取ると、暫くの間、糸の太さ分の隙間が開きます。この隙間に型取りの材料を流し込むことで、クリアな形成面が確認できる模型が完成します。
▼歯を削った部分と削っていない部分(マージン)の境目に小さな気泡が入っている。これでは正確なクラウンを作る事が出来ない
▼再度、型を取り直してマージンがしっかり確認できたので技工士さんに制作を依頼する
型をとった後は、クラウンを作って貰うために歯科技工士に送ります。
技工士さんのスキルの差は非常に大きく、当クリニックがクラウン制作をお願いしている技工士、青木啓高先生が作る補綴物は惚れ惚れする程の素晴らしい適合になります。
ラボHP:http://aoki-dent-labo.com/index.html
適合が良いクラウンも神経が無い歯を長期間、良い状態で使う為には無くてはならない処置方です。
1本の歯を長年良い状態で使うために
1本の歯を長年良い状態で使って頂く為には、ここでは書ききれない細かなこだわりと処置をしています。
治療後に一生使って頂く為にはどうしたら良いか?を常に考え、できる事は全て患者様に提供しています。
歯の健康を守るために、ぜひ一度ご相談ください。
あなたの歯の健康をお守りするために、私たちが全力でサポートいたします。
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You Tube解説動画
第1回目:歯の構造
第2回目:根の感染物質除去
第3回目:根管充填-根の中にセメントを詰める
第4回目:土台をつくる治療(支台築造ファイバーコア)
第5回目:精密形成と型取り