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根管治療

神経をとると言われた歯を残す

虫歯を放置した結果、かなり大きく進行してしまい、レントゲンを撮ると明らかに神経まで達している事がわかっても、諦めるのはまだ早いです。

虫歯を完全に除去して、顕微鏡で20倍以上に拡大し、神経の断面をよく観察すると残す事が可能な場合があります。

すでに神経が無くなっていたり、そこから膿が出てたりする場合は保存不可能ですが、普段より神経断面を見ていると、

「確実に残らない神経」か「残せる可能性がある神経」か判断できるようになります。

ただし、露出してしまった神経を塞ぐだけでは神経を残せる可能性は低くなってしまいます。今回は残すために必ず必要と考えるポイントをお伝えします。

 

神経を残すにはラバーダムが重要

まずラバーダムは必須です。これは、神経を温存する治療以外にも必ず必要と考えています。

ラバーダムについてはこちらに詳しく書きましたのでご覧ください。
ラバーダムについて

露出した神経に細菌がたくさんいる唾液が付着すると、残せる可能性はとても下がります。

ラバーダムをすればこの唾液からの感染を防止できます。しかし、ラバーダムの隙間から唾液が入る場合もあるので、しっかり拡大して確認、唾液のリークがある場合には、塞ぐためのパテ材料などを使います。

確実に唾液の侵入がない事が確認できたら、ラバーダムから外に出ている歯、治療する歯をイソジンとアルコールを使い消毒します。

医科で注射する皮膚も必ず消毒しますよね、唾液のほうが圧倒的に細菌数も多いと思うので、こちらも必ずおこなっています。

虫歯が深い場合にはラバーダムだけでは不十分なこともある

神経に到達するような深い虫歯の場合、崩壊がひどく、ラバーダムをかけると虫歯で凹んでしまった歯にラバーが被ってしまい治療ができません。

そんな時はラバーダムを切りとりますが、切ってしまうと唾液の侵入がおこります。

このような場合は光で固まる樹脂(デントダム)を使い、確実にラバーダムが術野に被らないように止めます。

治療する部位がしっかり見え、かつ唾液の侵入がない状態を作ってから治療に入る事が重要です。

 

当院が行う治療の流れ

いきなり神経側の虫歯は取らない

準備が整ったら、虫歯の除去に入りますが、いきなり虫歯をとって神経が出てしまうと、出血してきます。

出血がある状態では接着処理がうまくいかずに、治療後、唾液のリークから感染がおこり、神経をとる可能性が高くなります。

神経は歯の中心部にあるので、まずは最も外側の虫歯をとっていきます。

この時、神経がある側の虫歯を触ってしまうと出血の可能性があるので細心の注意をはらって触れないように治療をします。

ここで虫歯が大きく歯茎より下の場合は歯肉を一部切除する事があります。歯肉切除をおこなうと出血しますがこのコントロールも神経を残せるかのキーポイントになります。

症例にもよりますが、切除する大きさは2mm­×0.5mm程度になり、極めて小さい範囲です、術後の痛みの心配もほとんどありませんのでご安心下さい。

虫歯が無い面に確実な接着処理を

神経側の虫歯を残したまま、歯の外周から虫歯を完全に取り除いたら、樹脂で歯の外装を盛り上げて作ります。

この虫歯の無い外周に接着処理をしますが、ここに血液、唾液がついてしまうと接着できていな部分が出来てしまい、治療後唾液がリークして感染する可能性が高くなってしまうので、注意が必要です。

また、湿度のコントロールも接着強度に関係するので、これもラバーダムが必要不可欠な理由になります。

残せる神経なのかのチェック

歯の外周の虫歯を完全に取り除き、接着処理をし、城壁のように樹脂で盛り上げ、歯の形を再現したら、いよいよ神経側の虫歯を完全に取り除いていきます。

勿論、神経が出ないにこしたことは無いので、健康な歯を極力削らないように虫歯除去をします。

不幸にして神経が出てしまったら、神経の断面を顕微鏡で最大倍率に拡大して、よく観察します。

ここでダメージの少なく、炎症が大きくない神経かどうかの判断をします。

また5分以内に出血が止まるか、神経にエアーをかけても歯の表面との間に隙間が開かないかなど、いくつかのチェック項目がクリアできたら、露出している神経に直接MTAセメントを盛り上げます。

MTAセメントの盛り上げ方も重要

MTAセメントの盛り上げ方にもコツがいります。

歯髄にMTAセメントを盛り上げる時に重要なのは神経とセメントの間に死腔(隙間)が出来ないこと、また、この隙間が出来ないようにあまりグイグイと圧をかけて押してしまうと、歯髄が圧迫されて貧血になり予後不良になりかねません。適度な圧で、でもしっかりとセメントと神経が密着するように詰めるには技術が必要です。MTAセメントは非常に扱い難いセメントです。器具にはよく纏わり付きますが、歯の方には付きにくい性質があります。
MTAセメントを使い始めて20年弱経ちました。今ではこの扱いにくさも克服して適切な処置が短時間で出来るようになっています。

MTAセメントを盛り上げた後は唾液のリークが問題

MTAセメントを盛り上げたら、噛む面(咬合面)側を塞ぎます。MTAセメントは完全固まるのに約3日間かかります。この間に唾液のリークがあると、固まりが悪くなり、再度、感染して神経がダメになってしまう可能性があります。歯の部分はしっかりボンディング処理をして、コンポジットレジンと呼ばれる樹脂でしっかり閉鎖します。この閉鎖があまければ、唾棄が入り込んで感染したり、詰めた樹脂が壊れてしまったりします。しっかり強度がとれるような接着処理が必要です。

治療中の歯はあまり噛まないように言われる事が多いかも知れませんが、当クリニックではしっかり接着処理をしているのでお煎餅ぐらいは噛んでも大丈夫とお伝えする事が多いです。
片側を使わず、長期間反対側ばかりで噛んでいると、噛んでいる側の歯の負担が大きくなり痛みや違和感の原因になり、噛み合わせがずれてしまう事も考えられます。

しっかり、噛めるぐらいに強度が必要です。

治療後、1ヶ月間は様子をみます

しっかり仮詰めができたら通常1ヶ月程様子をみます。1ヶ月後に歯の神経の生死を確認するためにコールドテストをします。コールドテストは歯に冷たい綿棒を当ててどれくらいの時間で冷たさを感じるかのテストです。万が一神経が死んでしまっていると、いつまで経っても全く冷たさを感じません。

神経の生存が確認できれば、歯の周りを削って被せ物(クラウン)をつくる準備をはじめます。神経に達するような大きな虫歯の場合は、強度が弱く再度歯が割れてしまうなど、予後が悪くなる傾向にあります。多くの場合、クラウンを被せる治療をする事で、歯の破折を防止します。

 

まとめ

神経を残すには多くの時間と精密な治療や技術が必要です。

神経が無い歯の寿命と、神経がある歯の寿命はかなりの差が出ます。

出来るだけ神経をとらないように日々治療にあたっています。

しかし、虫歯が大きくなってしまう事が無いように定期的に歯科医院でメンテナンスを受け、小さい虫歯のうちに治療をする事が非常に重要だと考えています。
当院の歯の根の治療について

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