疲れると口角が切れる
体調不良や疲れが溜まると、口角(上唇と下唇が合わさった左右の端)がよく切れる方がいます。
なぜ口角が切れるのか?
- 単純ヘルペス
- 口腔カンジダ症
- 鉄欠乏生貧血
- ビタミンB不足
一般的には上記の4つが主な原因と考えられます。
1と2はウイルスや細菌感染で3と4は全身的な症状として現れます。
個別に解説しますが、背景には免疫力低下や栄養不足、消化吸収などに問題がありそうです。
単純ヘルペス
HSVと呼ばれる単純ヘルペスウイルスによる感染症です。初期感染後、体内で不活性化(休眠または潜伏)状態になります。その後、ウイルスは周期的に活性化状態になり、増殖を始め、神経繊維を通り皮膚に戻り、初期感染部位と同じ場所に水疱を出現させます。この再燃の引き金となるのは発熱、精神的ストレス、免疫力低下と言われています。
口腔カンジダ
カビの一種である真菌のカンジダ・アルビカンスによって引き起こされる感染症です。
カンジダ菌は口腔内や腸管内にいる常在菌で、通常、他の菌と競合しており、ある一定以上菌数が増えることはありません。しかし、副腎皮質ステロイド投与や糖尿病などで免疫が低下している状態になると増殖し始め、芽胞という状態から菌糸を伸ばして粘膜内に差し込み、毒素を注入します。唾液が減少していることや、長期間の抗生物質服用での菌交代現象により発症することもあります。
鉄欠乏生貧血
貧血とは血液中の赤血球数や血色素(ヘモグロビン)濃度が減少している状態で血がうすいことを意味します。
一般的は症状として、動悸、息切れ、易疲労感、頭痛、立ちくらみ、ですが体に現れる症状は爪が逆にそり返りスプーンのようになるスプーンネイル、氷をガリガリ食べたくなる異食症、物が飲み込みにくくなる嚥下障害、ベロが赤くなって痛い舌炎、そして口角炎があります。
血液データでは、MCV、血色素、血清鉄、フェリチン、などが指標になります。
また、身体のどこかに炎症がある場合、鉄の吸収が止まります。まずは炎症が無いかを確認後、鉄が多い食品、肉類、カツオ、ひじき、などを積極的にとりましょう。さらに鉄の吸収にはビタミンCが不可欠です。これらをうまく組み合わせてとりましょう。
ビタミンB不足
ビタミンB不足で口角炎や口内炎、舌炎、肌荒れ、咽頭炎などを起こしやすくなります。特にビタミンB
2(リボフラビン)とビタミンB6(ピリドキサール)不足は上記の症状を起こす大きな原因になります。
B6は免疫機能の正常化、皮膚の抵抗力、ヘモグロビン合成に欠かせないビタミンです。3の鉄欠乏性貧血にも関係があります。
繰り返す口角炎を防ぐ方法
しっかり噛んで唾液を出す
唾液が流れ出ることで自浄作用が働きます。1口30回は噛みましょう。よく噛む事で胃酸分泌も活発になり、細菌やウイルスの腸内侵入を抑制することができ、栄養素をしっかり消化吸収するためにとても重要なことです。
また唾液の中にはタンパク質の一種であるムチンという成分が含まれています。ムチンは潤いを保ち、お口の中の粘膜を保護しています。
さらに、唾液には抗菌物質であるリゾチーム、ラクトフェリン、ペルオキシダーゼ、分泌型免疫グロブリンA(IgA)が抗菌力を発揮しています。
リラックスして副交感神経優位に
例えば、多くの人の前で話をすると時や、大事なプレゼンの時はとても緊張します。こんな時は口の中が乾いたり、ネバネバした唾液でお口の中がいっぱいになります。
緊張して交感神経優位になっている時に出る唾液はネバネバ、楽しいことをしていたり、ゆっくりしていたりする時は副交感神経優位でサラサラの唾液が出ます。
実はこのネバネバ唾液には上記の抗菌物質がほとんど入っていません。逆に副交感神経優位の唾液からは抗菌力を発揮する物質がたくさん出てきます。
副交感神経が優位になる生活を心がけましょう。
ストレスが多い方は抗ストレスホルモンのコルチゾールをたくさん消費します。コルチゾールは副腎でつくられますが、ビタミンCが必要です。
ビタミンCが多い果物、野菜を積極的にとりましょう。
免疫力を上げましょう
免疫力が下がると、ウイルスやカンジダが元気になってしまいます。免疫力を上げるために規則正しい生活と良い食生活は欠かせません。
免疫の要は白血球の好中球です。好中球が活発に動き、細菌やウイルスを補足するためにはビタミンCが重要です。
また、粘膜からでる免疫としてIgAがありますが、こちらはビタミンAが必要になります。夕方になると眼がショボショボしたり、お肌や足のかかとがかさついたりする方はこのビタミンA不足の可能性があります。
更に免疫細胞であるT細胞は胸腺という組織で教育されて成熟します。亜鉛はこのT細胞の増殖に関与する酵素を作るために必要不可欠です。
まだ、他にも大切なビタミン、ミネラルがありますが、旬の食材をバランス良く食べるのがとても重要です。
口呼吸に注意
2020年に始まったコロナ感染症でマスクをする機会が増えました。それと平行して歯茎の腫れや出血をする患者さんが増加しています。マスクをすると苦しくなり口呼吸が助長されます。口呼吸で唇や口腔粘膜が乾くと、粘膜のバリア機能が低下し感染しやすくなります。鼻呼吸を意識して口唇は閉じることが大切です。
また、口角が切れたり、乾いたりすると、ついつい舌で舐めたくなってしまいますが、一時的に濡れても乾燥を助長することになります。さらに唾液の中の酵素でさらなるダメージになるので、舐めずに刺激の少ないワセリンやリップクリームで保湿をして下さい。
まとめ
このように、お口の不調は全身の現れ、別の病気が隠れていることもありますので、繰り返す口角炎には医療機関の受診をお勧めします。