「アマルガム」

皆様は聞いたことがあるでしょうか？
これは、虫歯を削った後に詰める歯科治療法です。

 

アマルガムとは

アマルガムは、

水銀５０％、銀３５％、錫９％、銅６％、微量亜鉛を混ぜ合わせ、虫歯で削った穴（窩洞）に詰める治療法です。

この水銀は無機水銀で水俣病などで問題になった有機水銀とは異なります。

また、そのままの状態で物理的刺激や熱などがなければ安定の材料になります。
ですが、近年アマルガムが身体に悪影響を及ぼす可能性があることが分かりました。

 

各国でのアマルガム対応

このアマルガムは各国で使用禁止または注意喚起になっています。
日本でも2016年に保険の適応から外れて請求が出来ないようになりました。

アマルガム充填はスウェーデンでは全面禁止、他の国カナダ、ノルウェー、イギリス、ドイツ、デンマークでは、
妊婦さんにはアマルガムの詰め物をしないようと勧告が出ています。

 

なぜ問題なのか

上記のように、安定な無機水銀であれば健康被害や問題は起こらないと考えられていました。

しかし、無機の水銀は25℃で蒸気化されることが分かりました。

また、食事やブラッシング、歯ぎしりなど、物理的刺激で水銀蒸気が発生し、その蒸気を鼻から吸引したり、頬や舌などの口腔粘膜から吸収、詰められたアマルガムが歯から直接血管内に入り全身に移行することも分かっています。

さらにアマルガムの削りかすや一部かけた破片などを飲みこむと腸内からも吸収されます。
この量は一日1〜10μgと言われており、かなり少ない量ですが、毎日吸収され続ける事で健康被害が出ることが考えられます。

 

どんな健康被害がでるの？

アメリカ食品医薬品局FDAがカナダ、スウェーデン、デンマークの研究をまとめた結果。
慢性疲労・頭痛・視覚障害・ふさぎこみ・眩暈・皮膚炎・注意散漫・物忘れ・舌の荒れ、胃腸障害がでるとのデータが出されました。

慢性疲労が出る原因ですが、酸素を運搬するヘモグロビン分子に水銀が付着し、各組織で酸素不足が生じることで症状がでます。

また、脳は不純物が通れないように脳血液関門でブロックしますが、水銀はこの関門を通過出来る事もわかっています。

さらに胎盤も通過出来るので妊娠を考えられている方や妊娠中の方も注意が必要です。
水銀が直接的に腸壁を障害したり、また、腸内悪玉菌のカンジダ菌の餌にもなるため腸障害がおこります。

当クリニックでも５年間、手足に出来ている皮膚炎がアマルガム除去で改善したケースもあります。

 

安全にアマルガムをとるには

アマルガムが詰められている歯から除去する場合はアマルガム自体を削って取り除くことが多いと思われます。
先にも記載しましたが、25℃で水銀蒸気が発生します。水銀蒸気を吸い込まないために、ラバーダムを出来るだけ鼻まで覆い、さらに鼻に酸素のチューブをいれて、ボンベ内の酸素を吸って貰います。

ラバーダムをする事で切削片を飲みこんでしまったり、頬粘膜や舌に付着した水銀の吸収も防げます。
また、お口の外には大きな掃除機のような口腔外バキュームを設置し発生した蒸気はもとより切削粉塵を吸引します。

このように当院では、安全にアマルガムを除去するために、できる限りの策を講じています。

 

どれぐらい水銀が入っているか

毛髪中の水銀濃度は、アマルガムが入っている方は入っていない方に比べて数倍高いと言われています。
実は一般の方と比べ歯科医師も毛髪中の水銀濃度が高いことがわかっており、これはアマルガムを除去するときに気化した水銀蒸気を吸い込むからだと推測出来ます。

上記の口腔外バキュームは患者さんだけでなく、歯科医師やスタッフの健康を守るためにもとても重要な機器の一つです。

実際に2006年に僕自身が毛髪検査をしてみると、なんと水銀濃度が11ppmとかなり高い値を示しました。
当時、スウェーデンでは毛髪の水銀濃度が2ppmを超えると脳心臓疾患の確率があがるために注意喚起をしており、その5倍以上高い値にビックリしました。
水銀は大型の魚に多く蓄積され、魚をよく食べる国の毛髪中の水銀濃度は他の国と比べると高いと言われています。

歯科のアマルガムだけでは無くお魚からも水銀は入ってきますので注意が必要です。

 

まとめ

上記のような症状があるかたは歯科でアマルガムの有無を調べて貰い、適切で安全な方法で除去する事が、肉体的、精神的によいQOLを与える事になると思います。