つめた、かぶせた歯が痛いときの治療法
前回のブログでは、
なぜ「つめた歯」「かぶせた歯」が痛くなるかについてお話ししました。
「つめた、かぶせた歯が痛くなる原因」
今回は、痛みを起こさないための工夫、注意点、治療法についてお話し致します。
痛みや違和感がおこらないようにするには
痛みの原因でお話ししたように、第一は定期検診を受け、虫歯が小さいうちに治療をすることが重要です。
以前では経過観察していた小さい虫歯の歯も、近年の研究では(イタリアのRicucci Domenico)虫歯がある歯は、ななり小さくても細菌が根の方に入り込んでいることが報告されています。虫歯が見つかればできるだけ早く、小さいうちに治療することをお勧めします。
ご自身で虫歯を認識していたり、違和感やしみがある歯を放置していたりすると神経をとらなくてはならない可能性が高まります。
また、治療時に歯を削る道具は高速で回転しています。この時に熱が出て神経に炎症がおこる可能性があります。通常、歯を削ると同時に水を出し、歯をクーリングしながら行います。麻酔をしていれば治療時に痛みを感じることはありませんが、治療後の痛みや違和感の原因になります。
さらに歯を削る道具ですが、何度も使い切れ味が悪くなっているものを使用すると発熱量が多く、神経に悪影響を及ぼします。当クリニックでは患者さんごとに新しいバーを使用しています。
虫歯菌が神経内に入り、元々炎症があった
これも繰り返しになりますが、早期発見、早期治療で防ぐことが可能です。
また、虫歯が深く、神経が炎症をおこしていても、ダメージのある神経を取り除き、その下にある健康な神経を残すことが可能です。唾液や血液など汚染がない環境で処置をし、顕微鏡で拡大しダメージの少ない神経だと判断できれば温存治療が可能です。
この治療をすると2、3日間、違和感、弱い痛み、冷温痛が出ることがあります。
材料が固まっていない
上記の通り、光を当てる器具が歯にあたるぐらい大きく口をあいていただく必要があります。開口量が少ない方は一時的大きく口を開けていただくか、治療前に筋肉をほぐす機器を使ったりします。また、口が開きにくい方は日頃より噛み締める癖があることが多いので、噛み締めないような舌の位置や飲み込み方のトレーニングが有効になります。
光があてにくく場所は確認もしにくい場所になります。やはり顕微鏡でしっかり硬まっている事を確認してから次の操作であるコンポジットレジン充填(じゅうてん)を使うことが肝心になります。
固まりを邪魔する唾液や血液、湿度が高かった
これを防ぐにはズバリ!ラバーダム防湿です。
天然ゴムのシートに1-2mm程度の穴を開け、その穴から治療する歯だけを出して治療する方法です。これをすることで唾液や歯茎からの出血が虫歯をとった歯面に付着することなく確実な処置が可能になります。また、口の中の湿度は100%、治療する歯は口の中とゴムシートで隔てられているので部屋の湿度と同程度になります。さらに、バキュームなどを使うことでさらに湿度を下げることが可能です。
ただし、ラバーダムをしても根元から唾液が入ってくることがあります。ラバーダム防湿の目的はあくまでも防湿なので、なんらかの方法で唾液の漏れを塞がないと目的が達成されません。
この漏れがないかも顕微鏡を使い拡大することで確実な防湿が可能になります。
歯にヒビがある
まず治療前に顕微鏡を使い20倍前後に拡大し、ヒビがあるかの確認をします。
拡大することで肉眼では見落としがちな極めて小さなヒビ、ヘアラインクラックなどを見つけることがあります。
入っている場所にもよりますが、歯の表面の場合にはその部分まで覆うような詰め物、被せ物が必要になります。
根の方までクラックが達している歯は予後不良になることがあります。
歯にヒビが入っている方は夜間の食いしばり、歯軋りをしていることが多いです。起きている時に力一杯噛み締めると男性で50-60kgの力が歯に加わります。
これが寝ている時になると、その5-6倍、300kg近い力が歯に加わり、歯がすり減ったり、ヒビが入ったり、割れたりする原因になります。
この場合はナイトガードと呼ばれるマウスピースを入れることが多いですが、あくまでも対処療法、根本原因にアプローチしなければ一生マウスピースをして寝ることになります。
僕自身も以前はひどい歯軋りのためナイトガードを毎晩装着して寝ていましたが、今では歯軋りがなくなりナイトガードから解放されています。
根本的に歯軋りを治すには、舌の位置が正しいか、正しい飲み込み方(嚥下)ができているかの確認と出来ていなければそのトレーニングをします。また同時に夜間低血糖がないかの確認も必要です。
寝ている時に血糖値が落ちると、通常はコルチゾールが出て血糖値をあげます、このコルチゾールがなんらかの理由で少なくなったり、出なくなったりと、体はアドレナリンを出して血糖をあげようとします。
アドレナリンはやる気ホルモンとか闘争ホルモンと呼ばれています。
「よーしやるぞー!」と頑張る時には思いっきり噛み締めることになります。
寝ている時はリラックスしているので副交感神経が優位な状態ですが、アドレナリンは交感神経なので、十分な睡眠時間がとれているのに朝スッキリ目覚められないのはこのせいかもしれません。
虫歯が残っている
痛みの原因でお話ししたように、意図的に虫歯を残す治療をしていない場合で、意図せず虫歯が残ることを防がなくてはなりません。
ここでも顕微鏡を使い、暗い歯の表面にしっかり光が届き、見にくい場所もしっかり拡大して虫歯が残らないようにします。
虫歯を専門用語で齲蝕(うしょく)と呼びますが、この虫歯を染め出す液、齲蝕検知液を削った歯に塗布します、その液を水で洗い流しても色が残っているところは虫歯に侵された象牙質になるので確実な除去が必要です。ただし、この齲蝕検知液は虫歯に反応して色づく訳ではなく、ダメージを受けた象牙質に入り込み色が残るのを見ているだけです。
最終確認は器具で削った歯の表面をこすり、柔らかくなっている象牙質がないかを確認してから修復操作に入ります。
まとめ
以上、痛みが残ったり、出てしまう原因もさまざま、それに必要な対処法も非常に難しく繊細な処置が必要になります。
限りなく痛みの少ない治療を目指していますが、早期発見、早期治療に勝るものはありません。
定期検診の大切さを改めて認識して頂けることを切に願っております。