鉄サプリメントで治療を要する鉄過剰症に
第23回日本抗加齢医学会に参加
今年も日本抗加齢医学会総会に参加しています。
ポスターセッションで凄い発表を見つけましたので報告させて頂きます。
血液データは歯科でも重要
当クリニックでは治療前に血液検査のデータをお持ち頂きますが、女性の貧血が非常に多く見受けられます。
貧血は医科から処方された鉄剤を飲まれる方がいらっしゃいますが、気持ちが悪くなったりと服用をやめてしまう方が多いそうです。
その一方で病院に行かずにネット販売などでサプリメントを購入され、服用されている方も多いと思います。
血液データで鉄を見る項目がいくつかありますが、貯蔵鉄を反映するものにフェリチンがあります。
当クリニックの患者さんでは一桁から20ng/mlぐらいの方が一般的です。
1桁から20ng/mlぐらいでは貧血状態と言えますが、多くの方々がこの辺りのデータをお持ちになります。
お口の中の健康を保つために鉄は必須
鉄はコラーゲンや骨造成には必須のミネラルになります。
歯を支える歯槽骨、歯と骨をつなぐ歯根膜、歯肉や歯の象牙質もコラーゲンです。
鉄が少ない事でお口の中の再生が上手くいかなかったり、歯や歯肉が弱くなってしまう事で虫歯や歯周病になってしまうリスクが高くなります。
口腔内の健康に鉄は必須なミネラルです。
鉄の摂取の注意点
鉄の摂取が口腔内の健康に必須とお話ししましたが、注意点もあります。
『鉄過剰は非常に危険』ということです。
今回のポスターセッションで報告があった一部の海外サプリメントで、「鉄過剰症」になってしまった症例が2例報告されました。
先程、お話しした貯蔵鉄のフェリチンですが、50-70ぐらいが適切な値と言われています。
この値がなんと2194ng/ml、もう一つの症例が1691 ng/mlと大幅な高値になっています。
過剰になった鉄は肝臓や心臓の細胞に蓄積され、いろいろな問題や症状が起こる可能性が考えられます。
一度溜まってしまうと、瀉血などの処置が行われても排出にはかなりの期間がかかってしまいます。
本発表でも2年間、毎月100mlの瀉血をおこない700ng/mlまで下がったようですが、これでもまだ高値です。
鉄サプリにもいろいろ種類がある
この方が2人が使われていた鉄サプリメントはビスグリシン酸鉄で海外サプリメント通販で簡単に手に入る物です。
吸収が良いので胃腸の不調、便秘、下痢、吐き気、嘔吐などの不快症状が少ない反面、吸収抑制がかからず、過剰摂取になる危険があります。
まとめ
身体には必須ミネラルの鉄ですが、酸化しやすいので過剰摂取は非常に問題があります。
鉄補給は食事からであれば、過剰摂取になりにくいので出来ればお薬やサプリメントに頼らずに摂取したいと思います。赤身のお肉やレーバーがお勧めです。
また、お薬で補給する場合は医師の元、検査データに基づいて指導を受ける事がとても重要だと思います。