なぜ歯を削るバーは患者様ごとに新品を使用するのか
歯を削る道具である「ダイヤモンドバー」「スチールバー」は患者様ごとに新品を使用しています。
今回はなぜ、毎回新品を使用するのかを解説していきます。
衛生面での心配はありません
歯を削る道具は、タービンやコントラにつけて使用する、スチールバーやダイヤモンドバーになります。
このスチールバー、ダイアモンドバーは通常、歯を削った後、洗浄し高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)をした後、再使用します。
オートクレーブによって全ての菌は死にますので、衛生面では全く問題はないと思います。
そのため、衛生面については交換する理由ではありません。
毎回新品を使用する理由
①切れ味が悪くなると不都合が多いため
スチールバー、ダイアモンドバーは衛生面では問題がなくても、使用回数が増えれば『刃こぼれ』が起こったり、ダイヤモンドが取れてしまったりしています。
これは目で確認することはできません。
通常、使ってみて『あれ切れ味悪いな』って思ってから新品と交換することが多いと思います。 歯科治療は時間との戦いの側面もあり、「ちょっと切れないけど交換する時間も余裕もないし、そのまま削ろう」と思ってしまいがちです。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24246370/
しかし、切れ味の悪いものを使用することで電動ドリルと同じことが起こります。
経験がある方もいらっしゃると思いますが、
硬い木に穴を開ける時に電動ドリルを使います。ドリルの刃が古いとなかなか削れず、発熱量が増えて、木が焦げて黒くなったり、焦げ臭くなったりします。
実はこれ、歯も同じことが起こるのです。
②神経にも悪影響がある
神経のある歯を削ると、発熱します。この熱を取るために通常は水をかけ冷却します。
しかし、水が当たりにくい部分に虫歯がる場合や、ダイアモンドバーが古く切れ味が落ちていると、熱が神経まで伝わります。
あまりに刺激が大きいと、歯髄は炎症を起こし歯髄炎になってしまうと、最悪、神経を取らなくてはなりません。
また、そこまで行くことは少なくても、治療後に歯がしみたり、痛みや違和感が出たりする可能性も大きくなります。
神経がない歯でも熱は根の表面にある組織、歯根膜まで達してしまいます。歯根膜に炎症が起これば一時的ではあっても同様な症状が出る事があります。
③お口を開いている時間の短縮につながる
使用回数が多いダイアモンドバーは削る効率が悪く、治療時間が長くなります。
歯への悪影響だけでなく、患者様がユニットに寝て、長時間大きなお口を開いていただく時間も限りなく短い方が良いと考えています。
このような理由からダイアモンドバー、スチールバーは患者様ごとに新品を出して使用しています。